陽子の心にも、氷点があったのだということ

昨日、「氷点」を読み終えたんですよ。
あまりにも現実離れした、究極の状況を書いているだけに
あまりにも感情移入はできませんでしたが、だって、イメージすらできない。
登場人物のだれ一人として好きになれなかったし。
でも最後は涙がぼろぼろでました。(丸の内線内&ホームで)


読み終えて、ジョン・アーヴィングを思い出した。
ホテル・ニューハンプシャーを読み終えた時の感じ。
物語がたんたんとたんたんと書かれて、終わる。
様々な出来事が起こっているにもかかわらず、
人物たちは泣き叫び傷つき時には死んだりしているにもかかわらず、
特になんでもないことを書くのと同じように描かれていて、
読んでいる方も特に乱されることなく読み進めるんだけど、
物語が終わるころにはその全ての出来事が自分に蓄積されていて、
最終章では心の底から(物語の中の人たちのように)安堵したり、泣いたりする。
読んでいる間ずっと心が物語から離れているように感じるが、
実はどっぷり世界にはまっていて、時にその世界のことを思い出したりする。


所謂、空気感とか雰囲気みたいなものの読者との共有は特にないよね
ただ、文章があって、それを読んでいる。そんな感覚だ。
似ているような似ていないような。
キリスト教の教えだとか考えと、現実の人間の大きな差異が
どちらも色濃く書かれてるところは共通か。


愚かである、でも救いがある


「君達はドイツ語がむずかしいとか、診断がどうだとかいいますがね、わたしは、何がむずかしいといって、キリストの”汝の敵を愛すべし”ということほど、むずかしいものは、この世にないと思いますね。大ていのことは努力すればできますけよ。しかし自分の敵を愛することは、努力だけじゃできないんですね。努力だけでは・・・・・・」



ということで、J・アーヴィングを久しぶりに読もうと思ったけど、
自分の本を見てたら、読んでいない井上ひさしの時代ものがあった。
打って変って軽そうな小説。これにしよう。
そういえば、Iのうえさんが、三浦綾子のなにかが面白いって言ってたなー
今度仮りよう。続・氷点は読まなくていいよね?